乾シイタケの高精度原産国判別法の開発研究に着手

我が国は食糧自給率が低下し、食の安全を脅かす報道が増加するなど、多様な課題を抱えています。また、農林水産物の輸出促進や地球温暖化の抑制などに対する施策も必要とされています。これら課題に対応するための技術開発を効果的、効率的に推進することを目的として、農林水産省は平成20年度から「新たな農林水産施策を推進する実用技術開発事業」を実施しています。

(財)日本きのこセンターは東京工業大学、(独)農業環境技術研究所とのチームでこの事業に申請しました研究課題「乾シイタケの高精度原産国判別法の開発」が採択され、研究を開始しましたので、以下に研究の概要を説明します。

1.研究組織

(財)日本きのこセンター菌蕈研究所が中核研究機関となり、サンプルの収集から分析まで、研究の全般を担当します。共同研究機関として、東京工業大学と(独)農業環境技術研究所が参加します。

本研究ではストロンチウムや鉛の同位体を分析するのですが、そのためには東京工業大学が保有する多重検出器型ICP質量分析計が不可欠です。また、同大学は本装置の改良による測定感度の向上を行います。(独)農業環境技術研究所は元素同位体を分析する試料の精製方法で多くの実績を持ち、本研究では主にシイタケ試料の効率的精製法の開発を行います。
なお、研究期間は平成20年度から22年度までの3年間です。

2.研究の目的

(財)日本きのこセンターは「日本産・原木乾しいたけをすすめる会」の委託を受けて乾シイタケの原産国判別法を既に開発し、実用化しております。その後、(独)農林水産消費安全技術センターに技術協力して判別精度の向上も図りました。しかし、現在の判別法は元素の含有量などを指標にしていることによる若干の誤差があり、実用性は十分ですが完璧とはいえません。そして、安価な外国産乾シイタケが日本産として販売される偽装問題を払拭するには至っておりません。この状態は消費者にはJAS表示の信頼喪失を、また生産者には国産品価格の不当低下による生産意欲の縮退を引き起こしています。

そこで、本研究では重元素同位体比の導入による新たな判別技術を開発し、外国産品と日本産品とを100%に近い的中率で判別することで偽装販売の根絶に貢献できます。

3.研究の骨子:なぜ重元素同位体比を用いるのか

元素としての性質は同じであるが、重さが異なる原子を互いに同位体といいます。たとえば、ストロンチウム(Sr)には質量数が84,86,87および88の4つの同位体があります。87Srはルビジウム(87Rb)の放射性壊変で生成し、時間とともに増加します。したがって、岩石の87Srと86Srの比は生成年代によって決まり、地域固有となります。日本列島は韓国や中国大陸よりも生成年代が新しいので87Srの生成量が少なく、日本の87Sr/86Srは相対的に小さくなります。

このような同位体は土から樹木を通してシイタケに吸収されるので、シイタケの同位体比はその土地の値を反映すると考えられます。本研究では、この原理を利用してシイタケの生産地を判別します。本研究によって高精度な原産国判別法が開発できることは確実であると考えています。