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財団法人日本きのこセンター・菌蕈研究所は、鳥取県が推進する「とっとり発」環境・食品産業クラスター推進事業による「きのこ産業クラスター事業」の委託を受け、平成16〜18年の3年間、「ハタケシメジの新品種の育成と新たな栽培法の開発」に取り組んできた。ここでは、その研究成果を紹介する。 【研究目的】ハタケシメジは、上品な旨みとシャキシャキした歯ごたえを特徴とする優れた食用菌である。また、日持ちがよいことと、近年、高血圧や脂血症、アレルギーなどの生活習慣病の予防と治療に有効であるとして、市場関係者はもとより消費者からも大きな関心が持たれている。 従来、ハタケシメジの栽培は主としてバーク堆肥(樹皮堆肥)を培地基材とする空調ビン栽培法によって行われてきた。しかし、これらの栽培法には、バーク堆肥に起因する培地調整機器の損傷や殺菌不良、発生の不安定性など幾つかの問題点が指摘されている。 本研究では、この問題点の対応策と、鳥取県に豊富に存在し、その有効な活用が課題となっているスギ間伐材および産業廃棄物として問題視されるオカラなどの有効利用を目的として、 1.ハタケシメジ栽培に適するスギオガコ培地の開発 2.スギオガコ培地に適したハタケシメジ菌株の育成 上記、2点に焦点を当て研究開発を行った。 【研究成果】ヒラタケやエリンギなどは、スギオガコに米ぬかを加えた培地で旺盛な菌糸生育を行い、比較的容易に子実体を生じる。ところが、ハタケシメジの場合、このような培地では菌糸生育がほとんど見られない。このように、きのこの種類によっては添加する栄養材の違いによって菌糸生育が大きく左右される。 そこで培地開発の第一歩として、スギオガコに添加する栄養材について検討した。その結果、スギオガコにそれぞれマイロとオカラを単独で加えた培地で比較的良好な菌糸成長が認められた。このことから、スギオガコとオカラ、マイロを基本的な構成要素としてそれらの混合割合について検討を重ねた。 検討の結果、オカラおよびマイロの量を培地容量の1/10に組み合わせた場合、培養期間や収量性が安定し、子実体形態も比較的良好であることが分かった。 本研究で用いたスギオガコは堆積処理をしていないオガコであり、加えてバーク堆肥を全く添加していないハタケシメジの栽培法はこれまでに例がない。 きのこの栽培培地は、栽培期間や収量性が安定していることは当然ながら、比較的安価であることと食料生産資材として安全であることが求められる。培地の改善策として次に、添加物のマイロが外国産で高価なことから、栄養基材としてのマイロの減量化あるいは代替品の検討を行った。他の添加物としては、米ぬか、一般フスマ、増産フスマなどについて調査した。 その結果、米ぬか及び増産フスマの添加が有効であることが判明した。一般フスマの添加は芽数を増やすものの生育が不揃いになり、収量の低下を招く傾向が見られたことから、ハタケシメジの栽培には不適であると判断した。これらの添加物に対してマイロを完全に除いた場合、培養期間の長期化や収量性の低下が見られることから、減量化の方向で培地組成の調整を行った。 その結果、培地組成(スギDオカラDマイロDヌカDフスマ=8D1D0・5D0・3D0・2(v/v))で調整した培地は瓶栽培(写真1)、袋栽培(写真2)のいずれにも適用でき、800t栽培瓶で栽培期間約85日、収量約120c、2.5`袋で栽培期間約95日、収量約600cの良好な成果が得られた。 この培地におけるハタケシメジの栽培工程を図1に示す。この図から分かるように、スギオガコを用いた栽培では、バーク堆肥を用いる場合の覆土や育成、排土といった複雑な工程が省かれていることが特長である。
図1 ハタケシメジの栽培工程 2.スギオガコ培地に適したハタケシメジ菌株の育成ハタケシメジの子実体形態の変異幅は大きく、菌株によってかなり違っている。同様に生息場所もさまざまで、菌株によって好む基質が異なる。 スギに適した菌株を得るため、菌蕈研究所保存のハタケシメジ野生株について、スギオガコとオカラ、マイロを混合した培地における培養形質を調査した。 その結果、菌糸成長が良好で子実体形質及び生産能の優れた3菌株を選抜した。 これらの培養形質は前記の栽培培地においても安定していることから、栽培試験を繰り返し、新規のハタケシメジ品種、鳥取LD‐1号(30940),鳥取LD‐2号(30917)および鳥取LD‐3号(33083)として品種登録出願した。 各品種は次のような特徴を持つ。 ■ 鳥取LD‐1号D菌傘は凸型で淡褐色。大型のきのこ。袋栽培向き。 ■ 鳥取LD‐2号D菌傘は丸山型で褐色。やや小型のきのこ。瓶栽培向き。 ■ 鳥取LD‐3号D菌傘は平型で濃褐色。株状になりやすい。トレハロースを多く含む。 このクラスター事業で開発された培地や育成品種は、初期の目的であるバーク堆肥に起因する問題点の対応策として十分な成果を発揮するものと思われる。 |